前回の記事では、現在の金融資産約1億3,400万円から、60歳で仕事を辞めた場合の資産推移をシミュレーションしてみました。
現在56歳で、60歳まであと約4年。
それまでは月20万円の積み立てを続け、60歳以降は年間600万円を生活予算として金融資産から取り崩していく。
そんな条件で計算しました。
運用利回りを0%、3%、5%として計算してみると、想像していた以上に運用による差が大きいことが分かりました。
特に年3%で運用できたと仮定した場合、年間600万円を取り崩し続けても、90歳時点で約1億円残るという結果になりました。
ただし、前回の計算には大きな収入を一つ入れていません。
公的年金です。
今回は、実際の自分の年金見込額を使って、60歳FIREのシミュレーションをもう少し現実に近づけてみます。
私の年金見込額は年間約190万円
年金の金額は人によってかなり違います。
加入期間や働いていた期間、給与などによって変わるため、一般的な平均額を使っても、自分のFIRE計画にはあまり意味がありません。
そこで今回は、自分の年金記録から確認できる実際の見込額を使うことにしました。
現在の見込額は、65歳から受け取る場合で、
年間約190万円
でした。
月額にすると約16万円です。
実は私は、若いころはかなりフラフラしていて、国民年金を10年近く払っていなかった時期があります。
今となっては褒められた話ではありませんが、その影響もあって、私の基礎年金は満額ではありません。
その後は会社員として厚生年金に加入してきたため、現在の見込額は基礎年金と厚生年金を合わせて年間約190万円になっています。
今回は計算を分かりやすくするため、この年間190万円を65歳から受け取るものとしてシミュレーションします。
なお、実際の受給額は今後の加入状況や制度などによって変わる可能性があります。
あくまで現時点の見込額を使った試算です。
年金が入ると年間600万円すべてを取り崩す必要がなくなる
前回のシミュレーションでは、60歳から90歳まで年間600万円をすべて金融資産から取り崩す前提にしていました。
しかし、65歳から年間190万円の年金が入るとすると、話が変わります。
年間の生活予算を600万円とすると、
600万円 − 190万円 = 410万円
です。
つまり今回のシミュレーションでは、
60歳から64歳まで:年間600万円を金融資産から取り崩す
65歳以降:年間410万円を金融資産から取り崩す
として計算します。
年間では190万円の違いですが、これが10年、20年と続けば、資産残高にはかなり大きな差が出るはずです。
60歳から64歳までは年金なしで生活する
60歳でFIREする場合、一つのポイントになるのが、年金を受け取り始めるまでの期間です。
今回は65歳から年金を受け取る前提なので、それまでは金融資産から年間600万円を取り崩します。
前回のシミュレーションでは、年3%で運用できた場合、
60歳時点:約1億6,090万円
65歳時点:約1億5,460万円
という結果になりました。
年間600万円を使いながらも、運用益があるため、5年間で資産が急激に減る計算にはなっていません。
もちろん、実際の相場が毎年きれいに3%ずつ上昇するわけではありません。
それでも、60歳から64歳までの「年金のない5年間」をどう乗り切るかは、60歳FIREを考えるうえで一つの重要なポイントになりそうです。
65歳から年金を加えると資産はどうなる?
では、65歳から年間190万円の年金を受け取り、金融資産からの取り崩しを年間410万円に減らしたらどうなるでしょうか。
前回と同じように、運用利回り0%、3%、5%の3パターンで計算してみました。
| 年齢 | 年0% | 年3% | 年5% |
|---|---|---|---|
| 60歳 | 約1億4,360万円 | 約1億6,090万円 | 約1億7,320万円 |
| 65歳 | 約1億1,360万円 | 約1億5,460万円 | 約1億8,790万円 |
| 70歳 | 約9,310万円 | 約1億5,750万円 | 約2億1,720万円 |
| 80歳 | 約5,210万円 | 約1億6,460万円 | 約3億220万円 |
| 90歳 | 約1,110万円 | 約1億7,430万円 | 約4億4,070万円 |
※年金にかかる税金や社会保険料などは考慮せず、年間190万円がそのまま生活費に充てられるものとして計算しています。
数字を見て、思っていた以上に年金の影響が大きいことに気づきました。
運用益ゼロでも90歳まで資産が残る
まず驚いたのが、年0%の場合です。
前回の「年金なし」のシミュレーションでは、80代前半で金融資産が尽きる計算でした。
ところが65歳から年間190万円の年金を加えると、
70歳:約9,310万円
80歳:約5,210万円
90歳:約1,110万円
となりました。
運用益がまったくなかったとしても、単純計算では90歳まで金融資産が残ります。
もちろん、90歳時点で1,000万円程度というのは、決して十分な余裕があるとは言えません。
長生きする可能性もありますし、医療や介護などで大きな支出が発生する可能性もあります。
それでも、年金を入れるか入れないかで結果がここまで変わるのは印象的でした。
年3%では資産がほとんど減らなくなった
さらに興味深かったのが年3%の場合です。
65歳時点では約1億5,460万円。
そこから年間410万円を取り崩しながら運用すると、
70歳:約1億5,750万円
80歳:約1億6,460万円
90歳:約1億7,430万円
という結果になりました。
つまり、この単純なシミュレーションでは、
年間600万円で生活しているのに、65歳以降は金融資産がほとんど減らないどころか、少しずつ増えていく
ことになります。
理由は単純です。
1億5,000万円程度の資産に対して年3%のリターンを単純に当てはめると、年間450万円前後になります。
一方、年金を差し引いた資産からの取り崩しは年間410万円です。
想定したリターンが取り崩し額とほぼ同じになるため、資産が減りにくくなるわけです。
こうして数字にしてみると、公的年金がFIRE後の資産寿命に与える影響はかなり大きいと感じます。
年5%の数字は参考程度に考える
年5%では、さらに極端な結果になりました。
90歳時点の金融資産は約4億4,000万円。
年間600万円使っているにもかかわらず、現在よりはるかに資産が増えています。
ただ、前回の記事でも書いたとおり、
「5%で運用できればFIREは余裕」
と考えるつもりはありません。
現実の相場は毎年一定ではありません。
FIRE直後に大きな下落が来る可能性もあります。
また、今回の計算ではインフレも考慮していません。
30年後も年間600万円で現在と同じ生活ができる保証はありません。
むしろ5%ケースの数字がここまで大きくなること自体が、一定利回りの単純シミュレーションをそのまま未来予測として使ってはいけないことを示しているように思います。
資産額だけを見ていては分からなかった
資産形成をしていると、どうしても金融資産の金額ばかり気になります。
1億円。
1億3,000万円。
1億5,000万円。
私自身も、
「FIREするにはいくら必要なのか」
ということばかり考えていました。
前回の記事でも、年間600万円を4%ルールに当てはめれば必要な資産は1億5,000万円になります。
現在の金融資産約1億3,400万円と比較すると、まだ少し足りません。
でも今回、公的年金を加えてみると、少し違った見方ができるようになりました。
FIRE後に重要なのは、
「いくら持っているか」だけではなく、「毎年いくら出ていき、毎年いくら入ってくるのか」
なのだと思います。
年間600万円必要でも、そのうち約190万円を年金で賄えるなら、65歳以降に金融資産が負担するのは年間約410万円です。
この違いは思っていた以上に大きなものでした。
だからといって「60歳FIRE確定」ではない
ここまで計算すると、
「もう60歳でFIREしても大丈夫なのでは?」
と思いたくなります。
でも、まだそう結論づけるのは早いと思っています。
今回もかなり単純化したシミュレーションです。
実際には、
- 相場の大幅な下落
- インフレ
- 税金や社会保険料
- 住宅の修繕
- 家電などの買い替え
- 医療や介護
などがあります。
年金についても、現在確認できるのはあくまで将来の見込額です。
そして、今回の計算では生活費を30年間ずっと年間600万円に固定しています。
実際の生活はそんなに単純ではありません。
だからこそ、
「この金額なら絶対に大丈夫」と考えるのではなく、条件を一つずつ変えながら、どのくらい余裕があるのかを見る
ことが大切なのだと思います。
60歳FIREが、さらに現実的に見えてきた
年間600万円というFIRE後の生活予算を決めたとき、4%ルールから計算した1億5,000万円という数字が一つの目安になりました。
現在の金融資産は約1億3,400万円。
単純に比較すれば、まだ少し届きません。
でも、私は今すぐ仕事を辞めるわけではありません。
60歳まであと約4年ある。
その間も積み立てを続ける。
FIRE後も資産を運用する。
そして65歳からは公的年金がある。
一つずつ現実の条件を加えていくと、
「60歳でFIREできるかもしれない」
という感覚が、少しずつ数字として見えてきました。
もちろん、4年後に実際にどうするかは、そのときになってみなければ分かりません。
資産額も、相場も、物価も、生活も変わっているでしょう。
それでも、「なんとなく1億円あれば大丈夫だろう」と考えていたころより、ずっと具体的になってきました。
FIREを考えるうえで必要なのは、目標となる資産額を一つ決めることではなく、
資産、支出、運用、そして年金をまとめて考えること。
実際の自分の年金見込額まで入れてみて、そのことを改めて感じました。


